高齢者の肺炎球菌ワクチン
- 院長コラム
コラム要約
- 以前は肺炎球菌ワクチンであるニューモバックス投与が一般的であり接種後5年を経過すると効果が弱まるために約5年ごとに再接種する必要があった。
- 近年新しい肺炎球菌ワクチンも登場したことから2025年に日本感染症学会より肺炎球菌ワクチンの接種方法が変更・追加となった。
- ニューモバックス既接種の方
- 接種後1年以上あけて「プレベナー20」もしくは「キャップバックス」の投与を1回のみ行う。
- 肺炎球菌ワクチン未接種の方
- 「65歳の定期接種としてニューモバックス→(1年以上あけて)プレベナー20 or キャップバックス 1回投与」
- 「プレベナー20 or キャップバックス1回投与 のみ」
- 「バクニュバンス→(1〜4年あけて)ニューモバックス→(1年以上あけて)プレベナー20 or キャップバックス 1回投与」
高齢者で肺炎を引き起こす肺炎球菌に対して、ワクチン接種の方法が2025年より変更・追加となりました。
日本感染症学会(65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版))
肺炎球菌についてや新しく追加となったワクチン・ワクチンの接種方法などについて解説していきます。
肺炎を起こす肺炎球菌とは
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、日本人の3~5%の高齢者では鼻や喉の奥に菌が常在しているとされます。
この肺炎球菌は90種類以上の方が存在しております。
健康なときは問題を起こさないこともありますが、体力が落ちたり、持病があったりすると、
-
肺炎
-
中耳炎、副鼻腔炎
-
敗血症(血液の感染症)
-
髄膜炎(脳や脊髄の膜の感染)
など、重い病気の原因になります。
特に高齢者や持病のある方では、肺炎球菌が本来無菌状態である血液や脳・全身に広がる侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)が問題で、命に関わることがあります。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)や各国のデータでも、侵襲性肺炎球菌感染症の一部は今も高い致死率が報告されています。
高齢者が肺炎になった際のリスクについて
高齢者が肺炎球菌による肺炎になると、
-
入院が必要になる割合が高い
-
心不全・COPD・糖尿病などの持病が悪化しやすい
-
寝たきりや筋力低下につながり、そのまま生活機能が戻らないことがある
-
侵襲性肺炎球菌感染症(菌血症や髄膜炎)を合併すると、死亡率が一気に高くなる
といったリスクがあります。
海外データでは、高齢者の侵襲性肺炎球菌感染症の致死率は10%を超える報告もあり、特に75歳以上や基礎疾患がある方でリスクが上昇します。
「ただの風邪」「いつもの咳」として放置すると重症化することがあるため、そもそも肺炎球菌にかかりにくくする=ワクチンで予防することがとても重要です。
予防のためのワクチンの種類
現在、肺炎球菌に対する主なワクチンには次の2タイプがあります。
- 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV:Pneumococcal Conjugate Vaccine)
-
代表例:バクニュバンス®(PCV15)、プレベナー20®(PCV20)、キャップバックス®(PCV21)など
-
ポイント:
-
細菌の莢膜多糖体をタンパク質に結合させたワクチン
-
免疫の質が高く、長期的な免疫・免疫記憶が期待できる
-
高齢者や基礎疾患のある方にも適している
-
-
-
肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPSV:pneumococcal polysaccharide vaccine)
-
代表例:ニューモバックスNP®(PPSV23)
-
ポイント:
-
23種類の血清型をカバー
-
広いカバー範囲がありますが、「結合型」に比べて免疫記憶が弱く、時間とともに効果が低下しやすい
-
-
肺炎球菌ワクチンの打ち方について
以前は「まずバクニュバンス→後にニューモバックス→(5年ごとに)ニューモバックス」と組み合わせて使うことが標準的でした
。
2025年9月30日に改定された日本感染症学会による肺炎球菌ワクチン接種の考え方は下記のようになっております。

また、各ワクチンの肺炎球菌の型に対するカバーを示します。

キャップバックスとプレベナー20について
プレベナー20®(Prevenar 20:PCV20)
-
20価肺炎球菌結合型ワクチン
-
従来のPCV13の13種類に加え、成人で問題になりやすい血清型(8, 10A, 11A, 12F, 15B, 22F, 33F など)を含み、1回接種で広い範囲をカバーします。
-
多くの国で、成人(特に高齢者・基礎疾患あり)に対して「PCV20単独1回」で完結できる選択肢として位置づけられています。
キャップバックス®(Capvaxive:PCV21)
-
21価肺炎球菌結合型ワクチン
-
2025年に承認されたワクチンです。
-
既存ワクチンには含まれていなかった8つの血清型を新たにカバーし、高齢者の侵襲性肺炎球菌感染症の大部分をカバーできると報告されています。
- プレベナー20と同様に「単独1回」で完結できるワクチンです。
- 高齢者における肺炎球菌性肺炎の血清型カバー率は72.3%と非常に高いカバー率となっています。(プレベナー20は42.8%、ニューモバックスは42・6%)
- 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)原因菌の血清型カバー率も78%と非常に高いカバー率になっています。(プレベナー20は50%、ニューモバックスは51%)
肺炎球菌ワクチンは、「重い肺炎・敗血症・髄膜炎をどれだけ防げるか」という、とても実用的な予防医療です。
-
「以前ニューモバックスを打ったことがあるけれど、追加が必要?」
-
「新しいワクチンに打ち替えた方がいい?」
-
「初めて打つにはどのワクチンが良い?」
といったご質問があれば、受診時にお気軽にご相談ください。





