コラム

特発性大腿骨頭壊死

  • 股関節の痛み

症状

特発性大腿骨頭壊死症の症状は、比較的急に始まる股関節痛と跛行です。長い時間かかって進行する変形性股関節症と違って比較的急性に発症しますので、関節の変形による機能障害は初期にはあまり見られません。

 

原因と病態

身体の他の組織と同じように骨にも血液循環が必要なのですが、元々何ヶ所か血流障害を起しやすい場所があります。大腿骨頭はその代表的な部位で、軟骨で被われた大腿骨頭が関節内に深く納まっているため血管が少なく、血流障害を起すと骨の壊死が引き起こされます。この壊死した骨の部分が大きいと体重を支えきれなくなって、潰れて(陥没変形)しまい痛みが出てくるわけです。
古くは潜函病(せんかんびょう)といって潜水夫が浮上してくるとき血液中に生じた気泡が骨の中の血管に詰まり同様の症状が引き起こされることが知られていましたが、現在は原因がはっきりしていない場合“特発性(突発性ではない)”大腿骨頭壊死症と呼んでいます。
本邦では年間2000人程度の発症があることが知られていますが、男性ではアルコール多飲、女性ではステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の服用に関連して生じることが多いことが分かっています。

 

診断

診断は早期には単純X線(レントゲン)で変化が見えませんので、疑われたらMRIを撮ります。
MRIで帯状低信号域などの特徴的な所見があれば確定します。他の部位の壊死も同時に診断したい場合には骨シンチグラフィーといって放射性同位元素を注射して全身骨格を撮影することもあります。

 

治療

お酒の飲みすぎやステロイド剤の使用に注意するということは考えられますが、骨は壊死していても潰れなければあまり症状を出さないと考えられます。従って股関節痛が出た時は既に陥没してしまっているわけですから、発症前に予防というわけには行きません。
ただ発症してからの症状の進展は段階的なパターンを示します。初期は比較的強い痛みがありますが、杖や局所の安静、投薬で治まる場合も多いのです。勿論骨壊死の範囲が広い場合や、ステロイドの使用などで骨粗鬆症が強い場合は陥没変形に歯止めがかからない場合が多いのですが、男性で骨が丈夫な場合など痛みが寛解(楽になること)することもあります。
壊死域が広く変形が進行する可能性が高い場合には、自分の骨を使う手術として大腿骨内反骨切り術や大腿骨頭回転骨切り術という手術を行うことがあります。これらの手術の目的は大腿骨の形状を変化させることにより荷重面(体重のかかる部位)に健常な関節面をもってくることにより陥没変形の進行を抑えることにあります。
また年齢にもよりますが、既に変形が進行してしまい自分の骨を温存する手術をすることが困難と思われる場合は人工股関節手術の適応となります。

ページトップへ戻る